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 PART 1 コア・ガンダム

 「新しい試作のガンダムが来たみたいだぜ」
 「え?」
 ラビアンローズに接触し、補給作業を手伝っていたカミーユにトーレスが耳打ちをした。
 「ウォン・リーがアナハイムの技術者を連れてブリッジで話してるのを聞いたんだ」
 「ああ・・・、ZZって奴か」
 プロジェクトZにおいて、カミーユの設計も取り入れられた経緯もあり、ガンダムZZと
いうMSが計画されていたことは知らされていた。
 「いや、コア・ガンダムとか言ってたみたいだぞ」
 「?、コア・ガンダム・・・」
 コア・ガンダムと聞いて、カミーユは箱の重なり合ったMSとは言いがたい物を思い出し
た。
 それは、次期プロジェクトZの会議において、コアファイターの採用が決まり、2つの開
発チームに競作させ出てきたのがZZとコア・ガンダムであった。

 ガンダムZZは、従来のA・Bパ−ツに、単独での飛行及び戦闘能力を加え、かつコアフ
ァイタ−のドッキングによるGア−マ−のGブル・Gスカイの要素を加えたものとなったの
に対し、コア・ガンダムは、A・Bパーツにコアファイターの要素、又は、コアファイター
にA及びBパーツの要素を持たせた3機のコアファイターのドッキング変形によってMSを
形成し、3機のドッキングの配列を変えることで、多局面に対応出来るMSを提示してきた
のであった。
 しかし、プレゼンテ−ションに出された設計図面及びイメ−ジCG画像に映し出されたそ
の容姿は、コアファイタ−を意識する余り、MSと呼ぶには、あまりにも不様な事から始ま
り、構造の複雑さから来る強度の不安・高コスト等の短所を指摘され、ZZの採用となった
のであった。

 「なぜ、今頃?」
 「何でも、諦め切れなかった設計者が、MSの予備パ−ツを使って勝手に作り上げたって
話らしいぜ。ウォンさんが、無駄に遊ばせておくようなMSは無いって、大声で皮肉を言っ
てたよ」
 「ああ・・・」
 カミ−ユは、苦笑いをして納得した。

 搬入も終わった1時間後、ア−ガマのクル−は、ブリ−フィングル−ムに集められ、コア
・ガンダムの説明を受けた。
 そこに映し出されたコア・ガンダムの容姿が、以前の物とは別の、MSらしい容姿になっ
た事にカミ−ユは、とりあえず胸を撫で下ろした。
 説明が済むと、クル−は、一路コア・ガンダムのある格納庫へと移動した。

 「これは・・・・」
 クワトロ・バジーナは言葉を失った。
 3機のファイタータイプに別れた試作機。
 機体色、赤のコア・Z。
 機体色、白のコア・百式。
 機体色、黄のコア・メタス。
 「資料と色が違うみたいだが?」
 平静さを装い、アナハイムの技術者に尋ねるクワトロ
 「先程、その事について話そうと思ったのですが」
 『大尉がさえぎった時か・・・・』
 コア・百式のカラーリングに対して質問が出たとき、クワトロは時間が無いと説明を進め
させていたのだ。
 「エウーゴより、次の新型には赤を採用するよう要請があったのですが」
 『シャアだ』
 誰もがそう思った。
 クワトロ・バジーナ = シャア・アズナブルと言う男は、赤という色に執着している。
 現在の愛機・百式の金色も悪くは無かったが、一般用リックディアスにお気に入りの赤を
とられた事が、いまだ気にいらなかったに違いない。
 なおかつ、百式は、百年もつようにと作られたMSではあるが、Zを開発する過程で出来
た副産物。
 考え方によっては、百式は発展途上型であり、Zが完成型とも言えなくもない。
 同じ赤にするなら、百式を赤く塗るより新型完成型で赤をと思ったのだろう。
 「そこで、今度の百式タイプには赤と指定がなっていたのです」
 『やっぱりシャアだ』
 心無し、サングラスの奥に動揺が見えた気がした。
 それでも、クワトロ大尉はポーカーフェイスをとっている。
 「しかし、塗装班の方で、勝手に百式とZの色を替えてしまいまして」
 「・・・・」
 『しゃべり過ぎだ』
 カミーユは、明らかにクワトロ大尉の裏での仕業と思える事を軽々しく口に出した技術者
の、これからの身の上を案じた。

 「では、大尉、この試作機のテストを兼ねて、例の作戦を行ってくれたまえ」
 『例の作戦?』
 「ああ、例のビーム攪乱膜で覆われたティターンズの軍事コロニーの事ですか」
 「この近くに、そのコロニーがあるのだ」
 「しかし、まだ完熟飛行も済んでない試作機で作戦を行うのは危険です」
 当然の事ながらブライトは危惧する
 「試作機といってもチェックは済んでるんです。実践でのデータを取れればと」
 「大戦も近い。この間に他の機体をオーバーホールして万全を整えれば良かろう」
 「よろしいのですか、大尉?」
 「・・・・そうだな。ウォンさんの言う事も一理ある」
 少し考えて、クワトロ大尉は、決断した。
 「カミーユはコア・百式、ファはコア・メタス、私がコア・Zで出よう」
 「?!、クワトロ大尉!、Zは僕の・・・・」
 思いもしない機体の割り当てにカミーユが言いかける。
 「・・・・解りました。カミーユ・ビダン、コア・百式で出ます」
 言いかけた言葉を飲み込み、カミーユは復唱した。
 『結局シャアは、赤なら何でも良いんだ!』
 カミーユは心の中で毒気づいた。
 「なんでファなんです!。僕だって、ちゃんと戦えるのに!」
 カツだ。
 「なんでいつも、僕を・・・・」
 カツの言葉を遮って、鈍い音がした。
 ウォンの制裁が始まったのだ。
 軍は理不尽なところだ。この頬で嫌というほど味わっている。
 こと、ウォン・リーの前ならなおさらだ。
 何も言われるままになるつもりは無いが、カミ−ユが途中で言葉を飲み込んだのは、乗る
機体が百式かZかという事で一々修正を食らっていては、たまらないと思ったからだ。

 「クワトロ・バジーナ、コア・Z、出るぞ」
 クワトロ大尉は、いつもの口調で、Zで発進した。
 「カミーユ・ビダン、コア・百式、行きます!」
 「ファ・ユイリィ、コア・メタス、出ます!」
 カミーユとファが続く。
 「そう腐るなよ、カツ。俺だって、エマ中尉だって残っているんだ」
 窓から恨めしそうに覗くカツ。
 声をかけたのは、アポリーだ。
 「それに、アーガマだって守らなければならないだろ?」
 これでは、子供をなだめるセリフだとアポリーは思った。
 しかし、アポリーほどのベテランが残っているのだ。間違っていない。
 今回は、現行のメタスに馴れたファが適してていると判断されたのだろう。